鍼灸の実技:第2節 刺鍼部揉撚法

鍼灸の実技:序・目次


第2節 刺鍼部揉撚法


 鍼を刺すときに、刺点を刺鍼する前と抜鍼後に揉撚するのを、刺鍼部揉撚法という。これは術式によって省略することもあるが、一般的には必ず行うことになっているし、行うべき理由がある。

1.前揉撚法(揉捏法、揉圧法、按法、揉法)

 刺鍼前に刺点を揉撚することである。刺鍼は元来、生体に異物たる鍼を刺入することであるので、生体反応をあらかじめ予想しての手技である。古鍼法ではこれを〈十四の鍼法〉の『摂または切』というたものである。その効用は次の如くである。

1)生活体に対する外来者としての鍼の侵入の予告である。つまり挨拶である。
2)刺鍼部の皮膚、筋肉を柔げ、刺激にならす。
3)刺痛を予告し、ならす。
4)刺入を容易にする。
5)初心者(初めて鍼をされるもの)の恐怖、心配を減じ、緊張をゆるめる。

2.後揉撚法

 抜鍼したなら、直ちに押手の示指又は拇指で揉撚するのである。その効用は次の如くである。

1)刺鍼刺激感を減少又は消去させる。
2)溢血を吸収させ、損傷の再生を促す。
3)鍼痕を未然に防ぎ、又は消散させる。
4)刺鍼刺激を有効にする。

 この方法も《十四の鍼法》では『捫』という手技とされているし、《素問の鍼解篇》では『補の術』と称している。

3.刺鍼部揉撚法の仕方

 刺鍼は生体に対して機械的刺激を与える。生体から見れば外来侵入者であるので、当然これに対して、生体は生体反応をもって応える。従って生体反応をどのように導びくかということについては術者は慎重なる注意をせねばならぬし、普通日常の礼法のごとく、一応の礼儀作法であり、会釈であり、挨拶であると考えるべきである。従ってそのやり方も叮嚀に落着いて行うべきである。その適当な仕方は、

1)押手の示指か拇指を用いるが、刺鍼部の硬さによっては、示指の爪甲に中指頭腹を重ねて力を加勢する。又は拇指で爪をたて、強く圧迫することもある。
2)加える力は感じよく、強からず弱からず、被術者の刺鍼部の硬度に適当せしめて加える。
3)皮膚表面を滑動させず、緩やかに、しかも深部まで力が通るように行う。
4)ゆっくり廻転するような心得で行う。
5)普通は10~15回位、時として30回以上に及ぶことがある。

6)揉撚する時、廻すのが早かったり、皮部だけをコスッたり、上づった調子で行わないこと、落ついて押えながらゆっくり行うのがよい。

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